『背無し』

会社からの帰路の途中、ある大学の前を通る。
そこは見晴らしの良いただの直線だが、何故か事故が多いことで有名だった。
その道をあまり使わない人には分からないだろうが、毎日車で出勤するオレや同僚には事故の理由は明白だった。
あるおっさんが原因なのだ。

そのおっさんは大学手前の横断歩道の脇に立っている。それも毎日。
雨の日も昼も夜も、ただ無表情で突っ立っている。
そして何故か、カラダごと真っ直ぐこちらに顔を向けているのだ。
おっさんに気付いてからしばらくは、「気味が悪い人がいるなぁ」程度の認識しかなかった。
しかし更なるおっさんの異常性に気付くのに、そう時間はかからなかった。

おっさんはカラダごとこちらを向いている。いつ、どんな時でも。
例えば横断歩道の手前30mからおっさんを認識したとする。
「ああ、今日もいるな。そしてこっち見てる…」
そのまま横断歩道を通過して、素早くバックミラーでおっさんを確認すると、やはりこちらにカラダごと顔を向けているのだ。
この異常さが理解出来るだろうか?

おっさんはどんな時でも必ず真正面からこちらを見ているのだ。
向きを変える気配すら見せず、瞬時にこちらを追跡してくる。
それに気付いた時オレは確信した。あのおっさんは人間ではないのだと。

うすら寒さを感じたオレがそのことを同僚に話してみると、そいつもおっさんのことを知っていた。
何でも地元では『背無し』という名称で有名らしい。
確かにおっさんは正面しか見せない。後頭部や背中は見たことがなかった。
変な霊もいるんだなと、その日は同僚と笑い合って終わった。

オレがビビりながらも、ある思いを持ったのはその時だった。
何とかしておっさんの背中が見たい。そう思うようになったのだ。
毎日通勤しながらおっさんを観察する。普通に通るだけではダメだ。おっさんには全く隙が無い。
通過後、バックミラーに目を移す瞬間におっさんはカラダの向きを変えてしまう。
オレはチャンスを待つことにした。

数日後、残業で遅くなったオレは深夜の帰路を急いでいた。
そしてあの道に差し掛かる。
目をやると、やはりいた。おっさんがこちらを向いている。
『背無し』の由来を思い出したオレは、素早く周りを確認した。
深夜の直線道路。幸い前後に他の車は無く、歩行者もいない。信号は青。
チャンスだった。

横断歩道の手前でぐっと車速を落としてハンドルを固定する。とにかくゆっくり、真っ直ぐに。
そして心を落ち着け視線を向けた。
おっさんはいつものように無表情でこちらを見ている。目は何の感情も示しておらず、本当にただ立っているだけだ。
しかし改めてじっくり見るおっさんは、いつもより不気味だった。
何を考えているか分からないというか、得体が知れないのだ。

やがて車はゆっくりと横断歩道を横切っていく。
目線はおっさんから外さない。怖くても意地で見続けた。
するとオレが目線を切らないからカラダの向きを変える暇が無いのか、
いつも正面からしか見れなかったおっさんの顔の角度がゆっくりと変わっていく。
車の動きに合わせてゆっくり、ゆっくりと。
おっさんは始めの向きのまま微動だにしない。

ついにおっさんの完全な横顔が見えた時、「これはいける!」と確信した。
おっさんから目線を切らないために、オレも顔の角度を変えなければ行けないため、
今や車の後部ガラスからおっさんを見るような体勢だ。
当然前なんか見えちゃいないが、気にもしなかった。
もうすぐで『背無し』の由来に打ち勝つことが出来るのだ。

そうしてゆっくりと永い時間が流れ…ついにその瞬間が訪れた。
『背無し』の今まで誰も見たことの無い背中が後頭部が、今はっきりと見えているのだ。
それはあっけない程に凡庸な背中だった。何一つ不思議なところは無い。
しかしオレの胸にはささやかな達成感があった。
じっくりと背中を観察し満足感を味わったあと、オレはようやく目線を切って前を向いた。いや、向こうとした。

目線を切って前を向こうとしたオレはしかし、あるものを見て固まった。
助手席におっさんがいた。もの凄い怒りの形相て。
心臓が止まったかと思った。
「うわぁあ!」
オレは悲鳴を上げブレーキを踏んだ。
徐行していたはずの車は何故か強烈な衝撃とともに電柱に激突し、オレは失神した。

翌朝、病院で目が覚めたオレはすぐに警察の聴取を受けた。
幸いにオレを除いて怪我人は無し。オレの車が全損した以外に大した器物損壊も無かった。
警察は事故の原因をスピードの出し過ぎによる暴走運転と断定したが、オレは抗議する気力も無かった。
あんなこと話す気すら起きなかった。

あれから5年。オレは通勤のために今もあの道を走っている。おっさんは変わらずいるし、相変わらず事故も多い。
ただ一つだけ変わったことは、オレがおっさんの方を見なくなったことだろう。
あの時、聴取の警察官がボソッと言った、「今回は連れて行かれなかったか」という言葉が今も耳から離れない。

ピザのデリバリー

東京でピザのデリバリーのバイトをしてた頃
高級マンションの人から注文が入った。

何の変哲もないミックスピザ1枚
急いで持っていくと高級マンションだけあって階数は36階。

ピザを持っていき、1階でインターフォンを鳴らしセキュリティのドアを開けてもらい
注文者の部屋へ。

部屋の前でまたインターフォンを鳴らし「◯◯ピザです」
出てきたのは老人。一万円を出し釣はいらないから頼みがあるという。

「そこの箱に入ったゴミを1階のゴミ捨て場においてきて欲しい」と老人

一万円もらって気を良くした俺は快く引き受けた。
が、みかん箱くらいの箱なのだけどすごく重たい
「一体何が入っているんだろうか?」と思いながら
やっとのことでエレベータまで運んだ…

息を切らせながら1回のボタンを押してエレベーターで降りていく
とその瞬間ギーーーーーーーーという音とともに

あんなに重かった箱がエレベーターの天井へ飛び上がった
そしてガン!と落ちてきた。

と思ったらエレベーターは緊急停止
エレベーターの中に閉じ込められてしまった…

慌てることもなくエレベーターに備え付けの緊急時の受話器のようなものを
手にとってみた。

エレベーターの管理会社にすぐにつながり10分ほどで外に出れた
が、なぜ緊急停止したのか… あんなに重かった箱がなんで宙に浮いたのか…

管理会社の人が来る前にとりあえず箱の中を見ると
鉄アレイ数個とそれにぐるぐる巻きになったピアノ線のようなものがあった。

ピアノ線は上に伸びておりこれが何処かに引っかかってエレベーターが緊急停止
したのだと思った。

案の定管理会社の人もそう言ってそのピアノ線のようなものを辿ってみる

階数は36階、あの老人の部屋につながっていた。
そう、その老人の首につながっていたのだ。

「自殺の手伝いをさせられたんだ!」と気づいた俺はその転がった老人の首を見た
とき、老人の目があったような気がして腰が抜けた。

その後マンションの管理人が警察を呼びおれは事情聴取やら、殺人の容疑やら疑われ
大変だったが、老人が残した遺書のおかげで、結局老人の自殺ということで解決された。

しかし、俺が老人の死の原因となったことには変わりない。
俺はすぐそのバイトを辞めた。思い出すたび嫌な気持ちになる。

新聞配達のバイト

中学生の分際で朝刊を配る新聞配達のバイトしてたんだけど、
その時に配達を任されてた場所が、大きな団地1棟とその周りだけだった。

その大きな団地で起きた体験なんだけど・・・
その大きい団地はその頃の建物にしては階層が高くて、地域でもかなり目立つ建物だった。

その高さのせいかその団地で何度か飛び降り自殺があってね。
そんな事が有ったから、その団地にはお約束の様に色々噂が有ったんで、
その団地の担当になった時は本当に嫌で仕方がなかった。

怖さに慣れるのに1ヶ月以上掛かったけど、何とか慣れてきたときの事。

その団地の配達をする時は、まずエレベーターで一気に最上階まで行って、
そのフロアーを配り終えたら階段で1階づつ下っていく、と言う方法で配っていて、
その日もそれで配り終えた後に、一つ仕事を忘れているのに気付いた。

その日はたまたま新聞と一緒に封筒を入れなければならない家があって、
その事を忘れていて(映画のチケットだったかな・・・預かってた)また戻るハメになった。

その家が11階だったんでエレベーターを使い、
その家に封筒を入れてエレベーターの所まで戻って来た時には、エレベーターは最上階で止まっていた。

普段は下りで乗る事は無いけど、
その時はもちろんエレベーターを使おうと、少し上の最上階から降りてくるの待ってたら、
1つ上の階でエレベーターが止まった。

エレベーターのスグ横に階段があるので、誰かが上に居たら気配や音でスグわかる様な状態なのに、
そのどちらも全く無かった。

エレベーターに乗り込む気配も音も、もちろんしない。

自分は霊感とかは全く無いけど、その時はもの凄く嫌な感じがしたのは覚えている。

その後何と言うか固まってしまったと言うか、情け無いがビビりきったとでも言うのか・・・
そのエレベーターが自分が居る11階に来るまで、手足に鳥肌を立たせながら動けないでいた。

そして自分の居る階でエレベーターが止まり、扉が開いた。

中が見える前に髪の毛が総毛立つ様に思えたのは、あの時が初めてだと思う。

中には二人乗っていた。

オレンジ色?のレインコートの様な感じの物を来た小太りの女の人と、
その子供らしき、同じくレインコート(ピンク色)を着ている女の子が、
手を繋いでこちらに背を向けて立って居た。

扉が開いて閉まるまでの間、10~20秒程度だったと思うけど、自分には永遠の時間の様に長く感じた・・・

その間二人は全くこちらを見ないし、ピクリとも動かなかった。
それが生きてた人で有ろうと無かろうと、もう自分には関係無かった。
(怖かったけど階段で降りて)戻って即効ヤメる事を告げて、制止も聞かずに家に帰ってしまった。

後で他の配達員に聞いたら、自分と同じ体験をした人は居なかった様だけど、
変な者、変な声を聞いたとかで、ヤメていった人は結構居たみたい。

エイプリルフール

今日はエイプリルフールだ。特にすることもなかった僕らは、
いつものように僕の部屋に集まると適当にビールを飲み始めた。

今日はエイプリルフールだったので、退屈な僕らはひとつのゲームを思い付いた。
嘘をつきながら喋る。

そしてそれを皆で聞いて酒の肴にする。
くだらないゲームだ。

だけど、そのくだらなさが良かった。

トップバッターは僕で、この夏ナンパした女が妊娠して実は今、
一児の父なんだ、という話をした。

初めて知ったのだが、嘘をついてみろ、と言われた場合、
人は100%の嘘をつくことはできない。

僕の場合、夏にナンパはしてないけど当時の彼女は妊娠したし、
一児の父ではないけれど、背中に水子は背負っている。

どいつがどんな嘘をついているかは、なかなか見抜けない。
見抜けないからこそ、楽しい。

そうやって順繰りに嘘は進み、最後の奴にバトンが回った。
そいつは、ちびり、とビールを舐めると申し訳なさそうにこう言った。

「俺はみんなみたいに器用に嘘はつけないから、ひとつ、作り話をするよ」

「なんだよそれ。趣旨と違うじゃねえか」
「まあいいから聞けよ。退屈はさせないからさ」

そう言って姿勢を正した彼は、では、と呟いて話を始めた。
僕は朝起きて気付くと、何もない白い部屋にいた。

どうしてそこにいるのか、どうやってそこまで来たのかは全く覚えていない。
ただ、目を覚ましてみたら僕はそこにいた。

しばらく呆然としながら状況を把握できないままでいたんだけど、
急に天井のあたりから声が響いた。

古いスピーカーだったんだろうね、ノイズがかった変な声だった。
声はこう言った。

『これから進む道は人生の道であり人間の業を歩む道。選択と苦悶と決断のみを与える。
歩く道は多くしてひとつ、決して矛盾を歩むことなく』

って。で、そこで初めて気付いたんだけど僕の背中の側にはドアがあったんだ
横に赤いべったりした文字で

『進め』
って書いてあった。

『3つ与えます。
ひとつ。右手のテレビを壊すこと。
ふたつ。左手の人を殺すこと。
みっつ。あなたが死ぬこと。
ひとつめを選べば、出口に近付きます。
あなたと左手の人は開放され、その代わり彼らは死にます。
ふたつめを選べば、出口に近付きます。
その代わり左手の人の道は終わりです。
みっつめを選べば、左手の人は開放され、おめでとう、
あなたの道は終わりです』

めちゃくちゃだよ。どれを選んでもあまりに救いがないじゃないか。

馬鹿らしい話だよ。でもその状況を馬鹿らしいなんて思うことはできなかった。
それどころか僕は恐怖でガタガタと震えた。

それくらいあそこの雰囲気は異様で、有無を言わせないものがあった。
そして僕は考えた。

どこかの見知らぬ多数の命か、すぐそばの見知らぬ一つの命か、
一番近くのよく知る命か。進まなければ確実に死ぬ。

それは『みっつめ』の選択になるんだろうか。嫌だ。
何も分からないまま死にたくはない。

一つの命か多くの命か?そんなものは、比べるまでもない。
寝袋の脇には、大振りの鉈があった。

僕は静かに鉈を手に取ると、ゆっくり振り上げ
動かない芋虫のような寝袋に向かって鉈を振り下ろした。

ぐちゃ。鈍い音が、感覚が、伝わる。
次のドアが開いた気配はない。もう一度鉈を振るう。
ぐちゃ。顔の見えない匿名性が罪悪感を麻痺させる。

もう一度鉈を振り上げたところで、かちゃり、と音がしてドアが開いた。

右手のテレビの画面からは、
色のない瞳をした餓鬼がぎょろりとした眼でこちらを覗き返していた。

次の部屋に入ると、右手には客船の模型、左手には同じように寝袋があった。
床にはやはり紙がおちてて、そこにはこうあった。

『3つ与えます。
ひとつ。右手の客船を壊すこと。
ふたつ。左手の寝袋を燃やすこと。
みっつ。あなたが死ぬこと。
ひとつめを選べば、出口に近付きます。
あなたと左手の人は開放され、その代わり客船の乗客は死にます。
ふたつめを選べば、出口に近付きます。
その代わり左手の人の道は終わりです。
みっつめを選べば、左手の人は開放され、おめでとう、
あなたの道は終わりです』

客船はただの模型だった。
普通に考えれば、これを壊したら人が死ぬなんてあり得ない。

けどその時、その紙に書いてあることは絶対に本当なんだと思った。
理由なんてないよ。ただそう思ったんだ。

僕は、寝袋の脇にあった灯油を空になるまでふりかけて、
用意されてあったマッチを擦って灯油へ放った。

ぼっ、という音がして寝袋はたちまち炎に包まれたよ。
僕は客船の前に立ち、模型をぼうっと眺めながら、鍵が開くのをまった。

2分くらい経った時かな、もう時間感覚なんかはなかったけど、
人の死ぬ時間だからね 。たぶん2分くらいだろう。

かちゃ、という音がして次のドアが開いた。
左手の方がどうなっているのか、確認はしなかったし、したくなかった。

次の部屋に入ると、今度は右手に地球儀があり、左手にはまた寝袋があった。
僕は足早に紙切れを拾うと、そこにはこうあった。

『3つ与えます。
ひとつ。右手の地球儀を壊すこと。
ふたつ。左手の寝袋を撃ち抜くこと。
みっつ。あなたが死ぬこと。
ひとつめを選べば、出口に近付きます。
あなたと左手の人は開放され、その代わり世界のどこかに核が落ちます。
ふたつめを選べば、出口に近付きます。
その代わり左手の人の道は終わりです。
みっつめを選べば、左手の人は開放され、おめでとう、
あなたの道は終わりです』

思考や感情は、もはや完全に麻痺していた。
僕は半ば機械的に寝袋脇の拳銃を拾い撃鉄を起こすと、
すぐさま人差し指に力を込めた。
ぱん、と乾いた音がした。ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん。

リボルバー式の拳銃は6発で空になった。初めて扱った拳銃は、
コンビニで買い物をするよりも手軽だったよ。

ドアに向かうと、鍵は既に開いていた。何発目で寝袋が死んだのかは知りたくもなかった。
最後の部屋は何もない部屋だった。

思わず僕はえっ、と声を洩らしたけど、
ここは出口なのかもしれないと思うと少し安堵した。やっと出られる。そう思ってね。

すると再び頭の上から声が聞こえた

『最後の問い。3人の人間とそれを除いた全世界の人間。そして、君。
殺すとしたら、何を選ぶ』

僕は何も考えることなく、黙って今来た道を指差した。
するとまた、頭の上から声がした。

『おめでとう。君は矛盾なく道を選ぶことができた。
人生とは選択の連続であり、匿名の幸福の裏には匿名の不幸があり、
匿名の生のために匿名の死がある。ひとつの命は地球よりも重くない。
君はそれを証明した。しかしそれは決して命の重さを否定することではない。
最後に、ひとつひとつの命がどれだけ重いのかを感じてもらう。
出口は開いた。おめでとう。おめでとう。』

僕はぼうっとその声を聞いて、安心したような、虚脱したような感じを受けた。
とにかく全身から一気に力が抜けて、フラフラになりながら最後のドアを開けた。

光の降り注ぐ眩しい部屋、目がくらみながら進むと、足にコツンと何かが当たった。

三つの遺影があった。父と、母と、弟の遺影が。これで、おしまい。

彼の話が終わった時、僕らは唾も飲み込めないくらい緊張していた。
こいつのこの話は何なんだろう。得も言われぬ迫力は何なんだろう。

そこにいる誰もが、ぬらりとした気味の悪い感覚に囚われた。
僕は、ビールをグっと飲み干すと、勢いをつけてこう言った。

「……んな気味の悪い話はやめろよ!楽しく嘘の話をしよーぜ!
ほら、お前もやっぱり何か嘘ついてみろよ!」

そういうと彼は、口角を釣り上げただけの不気味な笑みを見せた。
その表情に、体の底から身震いするような恐怖を覚えた。

そして、口を開いた

「もう、ついたよ」
「え?」

ねねちゃん曰く

お母さんはたまにどこかにでかける。その時は近所のおばさんに弟と一緒に預けられた。
おばさん家には中学生のお兄さんがいて、お兄さんとよく3人で遊んでた。
ある日、お兄さんが、私だけをトイレに連れて行き、

「悪い子か、どうかみてあげる」

と囁いた。

悪い子かどうかみてくれた。それは習慣になってしまい、おばさん家に預けられるたびにお兄さんとトイレで悪い子検査がはじまる。

ありがたかった。すごく安心した。満たされた。お兄さんは、神様だと思った。

悪い子はどうかは、わかるのはとても簡単だ。
まず、パンツをお兄さんの前で脱ぐ。
そのパンツに”黄色いシミ”がついてたら”悪い子”なのだ。

私はよく黄色いシミがついていた。けど、お兄さんがいれば安心なのだ。
「悪い子には、シミがついてしまうんだよ。このシミはねお母さんにとても嫌われてしまうものなんだ。だから、ねねちゃんが嫌われないように綺麗にしてあげるね。」

お兄さんがパンツを丁寧に綺麗に舐めてくれる。お兄さんの唾液で湿ったパンツを”つめたいなあ”と想いながら履く。
「このことはお母さんに言ったら絶対だめだよ。捨てられちゃうからね。」

絶対言ってはいけないと思った。お父さんとお母さんがよく喧嘩したりお母さんが泣きわめいたり、お父さんが変なビデオをみせたり弟を洗濯機にいれたりするのは、全部私が悪い子だからだと思ってた、この黄色いシミがあるから、だめなんだと。

だから、お兄さんは私にとってはヒーローで神様で、絶対的存在だった。
自分からお願いしたことだってあった。

「お兄さんと遊びたい」と懇願したことが何回もあった。
私にとっては重要なことだったから。

1度だけ、お兄さんが私のアソコを直に舐めたことがある。
「気持ちいいとかくすぐったいって思ったら、すごく悪い子なんだよ。だから、我慢してね。」

-ころして!!
この記憶が私を許すことなんてないんです!!

とねねちゃんは僕に教えてくれた。

ほたると純くん

こんな寒い日には
私はきまって、純くんの家に行く。
純くんは明るくて笑顔が可愛い人だ。

純くんにはちえりさんという彼女がいる
ちえりさんは品があって、会うだけで緊張してしまうほどだ。

純くんとは小学校の時から一緒にお風呂にはいってる。
私は恋人とはお風呂にはいることに抵抗があるが、純くんとは未だに一緒にお風呂にはいる。(性的関係は一切ない)

だから、寒い日は純くんとお風呂であったまって、話したい。
涙かお風呂の水がわからないくらい話したい。

けど、去年、ちえりさんに
『純とそうゆう関係がないのはわかるけど、私はいやなの。わかるわよね?』
と綺麗な顔を歪ませてしまった。

純くんは、ちえりさんの。知ってる
ん、知ってる

『ごめんなさい…』

純くんは、私が近所のお兄さんにいたずらされたとき『ぼくのおよめさんにしてあげるからだいじょうぶ!』と慰めてくれた。

いや、はや、あはは
なに期待してんのか
なに勘違いしてたのか
君だけは、君だけは、
本当のお友達って思っていた。

純くんは、『今度ちえりとみんなで旅行いこう』といった

ばか!、「本当の馬鹿は私だ…」

こんなクソ寒い日に、待ち合わせ時間から15分も遅れている純くんを駅前で待っている。

電車がきたみたいで、改札口は一気に人が溢れる。ついついカップルをみては、
「こいつらセッ●ス今日すんのかなーって、思ってしまう」

その人の多さに関わらず、一発で純君を見つけた。
純君も私に気がついたようで、手をふってくるが、私は、睨みつける。
不機嫌そうな私に、「遅れてごめんね」っと、近寄ってきた。

「こんな美少女を待たせるなんて、言語道断ですよ。」
「すいません」
「3万円ください、それで許してあげます。」
「夕食で勘弁してもらえませんか?」
「しょうがない、いいでしょう。」

なんていう、会話を経て、馴染みの洋食屋へ。
私は、きまってオレンジジュースとハンバーグプレートを。
純君は、ソーダとエビフライプレートを。

「それで、ちえりさんとは、どうなの、最近」
「ああ、超元気だよ」
「え?夜の行為が?」
「そうじゃなくて、健康めんのほうね!」
「あっそう。」

「何が気に食わないんだろうね、この人は」
「全部かしらね」

「・・はいはい。で、そっちは、仕事どうなの?」
「あー、しにたいかな」

「いつもそればっか。」
「そうでしかないよ。頑張るしかないもの。
私は、毎日がんばってるんですよ」
「みんな、がんばって生きてるよ」

「がんばって、っていう言葉嫌い。」
「最初につかったの、ほたるだよ。」

「そうでしたっけ。」
「そういえば、もうすぐバレンタインだけど、あげる人いるの?」

「あー・・・、まあ、ね。」(本当はいないですけど)
「え?!まじか!好きな人できたの?なんでいわないのさー!」
「企業秘密です。」
「だれ?」

「純君が、知らない人だよ。」
「どんなひと?会社の人?」
「・・・さあねー。」

「もしかして、声優さんとかそうゆうオチ?」
「そうかもしれないですね。」
「絶対そうだな、うん。」
「純君は、ちえりさんから毎年手作りもらってるんでしょ?いやらしい」

「ちえりのチョコは本当にうまいからね。あれは、店をだせるレベル」
「ノロケやーめてー。おつおつおー。」
「ノロケてないし!ノロケたらもっとすごいから。」
「うわー、きしょー。」

そうこうしているうちに、美味しそうなお食事が運ばれる。

「それより、髪、だいぶのびたね。」
「そう?」
「うん、綺麗にのびてるじゃん。」
「ありがとう。」

「染めるの?」
「なんで?」
「いや、この前、みさとちゃんから、ほたるに染めたほうがいいってーいってよって、
云われたからさ。」

「ああ、本人に言われたよ。」
「んで、染めんの?」
「・・・染めようかな。」
「もったいないよ」

「え?」

「もったいないと、俺は思うよ」
「どうして?」
「え?だって、そこまで伸ばして黒髪にしてきたわけだし、
ほたるだって、染めたくないでしょ?」

「・・うん」

「それに、俺は、ほたるの黒髪好きだし。」
「・・・わかった。染めない。」
「それでいいよ。ん。」

「ねえ、」
「んー?」

「今日、私を、抱いてくれない?」
「・・・・は?」

「意味わからない?」
「うん、どうしたwwいきなり。」

「だからさ、私の●●ん●に、純君の●ち●●●、イレテって、いってるんだけど?」
こんな明るいお店で、恥じらいもなく平然と言う私に、純君は目をぱちくりさせていた。

「生理前なの?」
「違うけど。…引いた?」
「うん、すっごく。」
「そう、じゃあ、いいや。ごちそうさまでした。」
「・・・どうしたの?」
「べつに。忘れて。」
「いや、本当に。」
「だから、べつに。」

「まじめに、言ってるんだけど。そんな馬鹿なことほたるの口からでるわけないと思うけど。なんかあったの?また友達になんか言われたとか?それとも、ビデオの見過ぎなわけ?」

「・・・ちえりさんに、悪いことしたね。忘れてって、ば。冗談よ」
「あの」

「しつこいな、冗談だって。」
「いいけど、別に。抱いても。」

* *


「じゃあ、お風呂にはいろうか。」
「うん、」

久しぶりに、純君と入るお風呂は、いつもと違う。
だって、いつもは純君の家のお風呂だけど、今日は、ちがう。
ラブホっていう、大人のお城だもの。

「一年ぶりくらいだね、一緒にお風呂にはいるの。」
「・・う、ん」
「太った?」
「・・・うん」

「今年も、ダイエットがんばらないとね。」
「いわれなくても、がんばってます」
「はは、そうか。ごめんね。でも、そのくらいのほうが、俺は好きだけどね」

「なにいってるんですか、ちえりさんなんて、ガリガリじゃないですか。」
「あー、でも、胸はでかいからねー、あいつ」
「、むかつく。」

「どうして?」
「わたしは、どうせ、ちいさいですよ」
「・・じゃあ、触らせて。」
「・・・・」

「ふふ、やっぱり。」
「はあ?」

「抱いてくださいって、いっても、触られるの本当は怖いんでしょ?」
「そんな、こと。」

「いいよ、無理しないで。あったまったら、帰ろうか。
オールすると、ほたるの親がまた心配するしね。」

「・・・子供、なんかじゃないよ」
「 子供だよ。俺とほたるは。ずっと、ね。」

何か、糸がぷちんときれたのです。

それは、なんていうんでしょうね。ああ、あの感覚に似ています。髪をばっさり切ったり、 
ドッチボールの時、嫌いな子をあてたときとか、お気に入りの食器を割ってしまった時とか、

「今日からお父さんはいないんだよ」

と言われたあの日とか、お父さんに裸にされて大人のビデオをみせられた時とか、
パンツを舐めてもらった儀式とか、愛を探して探してずっと、迷ってるみたいなあ、
まあ、なんというか、なにかが、ぷっちんと、きれたのですよ。

私は、純君の唇を塞いでいたのです。

「・・ばっか。」
純君が私から離れようとするので、頭を押さえつけ再度、唇を塞ぎました。
あまいあまいお菓子の味が私の舌を犯し、私を麻痺させたのです。

無我夢中で私は、純君にキスを、してしまったのです。
嗚呼、この18年間、なんだったのでしょうね。

18年間、なにもせず、ただ、一緒に笑いながらお風呂に浸かっていた私は、
なんだったのでしょうか。

これが、私の本性だったのでしょうか、それとも、-。

苦しくなり、息を吸い、目を開くと、
「嗚呼、馬鹿なことをした」
と一瞬そこでよぎったのです。ですが、男って、単純ですね。

純君は私の乳房を掴み、今度は、純君から、キスをしてくれました。

「純君・・・、わたし」
「・・・あ、ごめん」

ぱっと、純君は我に返ったように、私から手を離し、湯船からあがりました。

「ごめん、どうかしてる。」
と言い残し、お風呂を後にしました。

私は、すぐさまあとを追いかけて…
「ああ、どうしてそこでジっとしていなかったのでしょうね」

後ろから純君に抱きつき、ベットに押し倒しました。
「・・触って。」
「・・・」
「わたしの、おっぱい、触って?」

そこから、純君も、ぷつんと、きれたのです。
子供のころ、風船をもらうと、とてもうれしかった。

お空にぷかぷか浮かぶ風船がとても面白くて、可愛くて、
でも、手を離すと風船はあっというまに、お空に飛んでしまい、
どこまでも、どこまでも、私から離れてしまうのです。

「あ、ァ・・。じゅッん・・・」
「ハァ。ほたる、」

部屋中、私の愛液か、純君の液か、わからないほどの、香りがしていました。
「相舐めをしたせいなのかしら」

その、香りが、香水にしたいくらい、素敵だったのです。

「本当に、イれるよ」
「うん。」
「・・ん」
「イっ・・・。ん!!ン・・・」
「いた、い?」
「だ、いじょーぶ・・」
「動くよ」
「うん、好きに、動いて。」

純君が、純君が、純君が、私を抱いてる
ああ、純君のモノが私にはいってる、私を求めてる
私で、感じてくれてる

 あ の 、 純 君 が 、 私 と  、 セ ッ ● ス し て る ん だ 。

「純君!じゅん。。くん!」
「・・・ほたる」
「すごい、じゅんくんの、お●ん●●すごいいいもの。

すごくいい。わたしの、純君のかたちにして」
「ほたるの、すごい、きもちいい。もういきそう」

「はやい、よ。まだ、やだ。ン!んん!」
「ほたる」
「じゅんくん!ジュンく・・・ン!」
「名前で呼べッて。」
「じゅんや、じゅんや、ああ・・・ンッ!

                    ねえ、ちえりさんのよりいい?」

「うんッ、いいよ」
「・・・ああ、うれしい、うれしいよ」

こんな寝とられAVがあったなーって考えられる私は余裕だったのでしょうか。
言葉では、喘いでばかりいましたが、私は、自分より、純君がきもちよくなってるかどうかのほうが、とても重要で心配でたまらなかったのです。

「・・・純君。」
「んー?」

事が終わり、二人ベットに寄り添って、純君は私の髪でくるくると遊んでいました。

「・・・ごめんね」
「なんで」
「ん、大切なもの壊して、さ」
「こっちのせりふでしょ、それは」
「ごめんね」
「ねえ、ほたる」
「ん。」
「好きだよ」
「・・・ん」
「ずっと前からあの約束の時からずっとずっと、ほたるが、好きだった」
「・・・うん」

「ちえりのことで、妬くほたるをみてるのが、すごいね、優越だったんだ」
「そう、」
「好き」
「・・私も、ずっと、純君が好きだっ、た・・ああ、ごめんね」

「春になったら、また、ドイツ村にいこうか」
「・・・」
「ほたるの、大好きなチューリップがたくさん咲いてるよ。」

        春になったら、赤いチューリップを、

        誰かに、   もらえるだろうか。

「ごめんなさいって、言った私は、偽善者にすぎないのです。」